maxon Inside
最高の性能を発揮するセラミック


セラミック部品のアディティブマニュファクチャリング (積層造形法) は、プロトタイプ部品の製造を加速化し、新たな可能性を切り開きます。
スイスを拠点とする企業、maxonは、複数のNASA探査機で火星までの旅を果たしたドライブ技術で一躍脚光を浴びました。しかし、フライブルク近郊のゼクサウ (Sexau) にある同社の工業用セラミックのハイテク部門の存在は、あまり知られていません。ここでは、セラミック部品が3Dプリントされ、レーザーによる造形が行われています。
「スチールよりも耐摩耗性が高く、遊星ギアヘッドの軸やシャフトの素材にも適しており、コンポーネントの精度と信頼性をさらに高めることができるものは何だろう?」これは、maxon motor GmbHの技術者たちが20年以上前に自問自答した技術的課題です。これに対し、ゼクサウのコンピテンスセンター CIM/MIMの事業開発および品質エンジニアリング部門の責任者であるシュテファン・ツィルム (Stefan Zilm) が出した答えは「金属射出成形と同様のプロセスであるセラミック射出成形で製造されたセラミック部品を使用すること」というものでした。
今日、同社は工業用セラミックス分野における幅広い専門知識を有しています。CIMを使用すれば、数万個単位のコンポーネントの連続生産が可能です。しかしそれでも、あらゆる経験、そしてCAD、有限要素計算、シミュレーションといった最先端エンジニアリング手法を使用しても、新しいアイデアが実行可能であるか、またはセラミック部品が製造可能で計画した通りに作動するかは、最終試験により決まります。
発案から実際のセラミック部品が完成するまでの道のりは長く、費用もかかります。さらに、焼結するグリーンコンパクト(成形体)を製作するには、高価な金型が必要です。その後、旋盤加工、切削、焼結、研磨といった手間のかかる加工プロセスが行われます。ツィルムは次のように述べています「最初のサンプルでは、このプロセスは非常に複雑で、多くの時間と費用がかかります」。
プリンターから作成されるセラミック
ただし、もうひとつ別の方法があります。それは、3Dプリンティング技術を使用することで、これらの手間を省く方法です。この技術は、プラスチックコンポーネントの分野ではすでに確立されており、金属コンポーネントにもますます使用されるようになってきています。プラスチックや金属コンポーネントのプリンティング技術は数年前から工業生産の一部となっていますが、セラミックコンポーネントのプリンティング技術は、まだ実験から製造工程への移行を試みる過程にあります。しかし、この技術が非常に有益であると確信したmaxonは、セラミックコンポーネントの試作品をより早くお客様に提供し、まさに先駆的技術での対応を可能にすることを目標として、5年前にパイロットテストを開始しました。ツィルム「こうしたプリンターを使用すれば、最初の2~3回の開発ループをはるかに簡単かつスピーディに完了できます」。
綿密な市場調査の結果、maxonはフランスを拠点とするメーカー3DCeramのプリンターを採用しました。このプリンターは、maxonの独自の要件を満たすようにカスタマイズされました。「私たちがこのプリンターを採用した主な理由は、高精度であること、そして幅広な印刷領域300 x 300 mmが可能であることでした」とツィルムは説明します。光造形法のプリンターは、バインダーとセラミック粉末を混合したスラリー(泥漿)をレーザーで凝固させ、下から上に積層してコンポーネントを造形します。積層ピッチは0.025~0.125 mmです。積層を重ねるごとに、プリンターベッドが1段下がります。これにより、硬化時の均一な収縮、高精度、凝固中の均一な収縮と、非常に精細な再現性が保証されます。また、サポート材は不要です。3DCeramシステムの特別な長所は、わずか50立方ミリメートルの非常に小さな部品を作成できることです。
要件に応じて、通常セラミック部品は、ジルコニウムと酸化アルミニウムで作成されます。これらは、テクニカルセラミックス分野の「パンとバター」のような、必須の材料です。どちらも3Dプリンターのスラリーとして使用することができます。脱バインダーおよび焼結技術はCIMプロセスに対応しているため、3Dプリンターで作成されたグリーンコンパクトは、連続生産部品と同じ生産システムを通過させることができます。必要とされるコンポーネントの形状の複雑さと公差レベルの要件に応じて、少量の連続生産も可能で、セラミック射出成形 (CIM) の優れた代替技術として適用することができます。
ただしこのプロセスには、UVレーザービームの直径により、製造できる最小肉厚に限界がある、とツィルムは説明します。コンポーネントは圧縮空気と添加剤を使用して清掃され、コンポーネントから余分な材料が除去されます。0.5 ミリ以下の穴は、射出成形のように完全な円形にすることはできませんが、試作品としては十分な仕上がりです。
プロジェクトの発案から支援する開発パートナー
今では、当社のお客様は3Dプリントで一般的に適用される標準化されたSTEP (Standard for the Exchange of Product model data) 形式 (製品データ交換のための規格) でファイルを送信するだけで、すぐに見積書を受け取ることができます。そして注文確認後、わずか10~14日で、お客様は最初のプロトタイプ部品を入手することができます。「以前は、これに数週間から数か月かかり、金型の費用も高額でした」。ツィルムはそう振り返ります。
最も理想的なアプローチは、お客様のプロジェクトの最初の段階からmaxonにご相談いただくことです。「私たちは、最初の発案段階から皆さんを支援する開発パートナーです。発案段階からかかわることで、可能な限りセラミックとの適合性を確保する設計を支援することも可能になります」とツィルムは説明します。こうして、複数のコンポーネントを組み合わせて、最適化された機能を持つ単一のコンポーネントに仕上げることなども可能となります。セラミックに必要な原材料の1キログラムあたりの価格がスチールの約10倍であることを考えると、このような最適化は非常に重要であるとツィルムは説明しています。「たとえば、耐摩耗性、温度安定性、または潤滑剤が不要など、飛躍的に有益な特性を提供することでも、このような最適化の正当性を説明する必要があります」。
もっとも、アディティブマニュファクチャリングの技術は、まだまだ未知の可能性を秘めています。コンピテンスセンターCIM/MIMの責任者であるアンドレアス・フィリップ (Andreas Philipp) は、次のように述べています。「以前のように古典的な方法ではなく、3D (三次元) で考える必要があります」。これにより、確立されたプロセスを3Dプリンティング技術が完全に置き換えることができる、まったく新しい可能性が生まれるのです。





