maxon Story
バイオニックプロテーゼの革命


障がいを完全に補う: これがRevival Bionics社の使命です。2年間の起業準備期間を経て2021年に設立されたこのスタートアップ企業は、バイオメカトロニクスの最先端技術を開発し、下肢切断や麻痺を持つ患者の歩行を再現します。Revival Bionics社は、膝下切断患者のための最初の製品である推進機能付き義足のために、最高の性能を発揮する素材を探していました。このスタートアップ企業は、製品の品質とチームの豊富な専門知識を理由に、推進コンポーネントをmaxonに依頼することを決定しました。このコラボレーションのサクセスストーリーをご紹介します。
障害を完全に補う
今日、さまざまな卓越した技術が存在するにもかかわらず、下肢切断を受けた患者、または麻痺患者は、依然として能力を100%回復することはできません。Revival Bionics社の最高経営責任者は、彼自身が2018年に障がいを負い、この事実を痛感しました。ギヨーム・バニエル (Guillaume Baniel) 氏は、左足の麻痺を補うため、エンジニアとしての経験を活かし、推進機能付き補装具を製造することを決意しました。「医療チームによる手厚い支援を受けることができるにもかかわらず、自分の障がいや肢切断者の障がいを完全に補償する満足のいく義肢がまだ存在しないことに気付いたんです。私は、Thales社での実務経験をバックグラウンドとするUTCエンジニアとして、自分ならより優れたデバイスを設計できると確信しました」と、Revival Bionics社の最高経営責任者は回想します。1年間のリハビリの後、彼は市場で入手可能な唯一の最先端バイオニックプロテーゼに興味を持つようになりました。このプロテーゼは、2本の脚を切断した有名なクライマーであり、現在はMIT Media Lab社のBiomechatronicsグループの責任者を務めるヒュー・ヘア (Hugh Herr) 氏によって開発されたものです。
しかし、問題がありました。これらのバイオニックプロテーゼの存在意義があるとしたなら、一歩進むごとに発生する甲高い音と、不快感の原因となる硬直性を抑制するには限界があることに気づいたのです。その後、Revival Bionics社はプロジェクトを方向転換。膝下切断者向けの推進力があり、快適で、静寂な義足を設計することを決定しました。
「病院では、障がいを50%以上補うことができない不快な義足で一生を過ごさなければならない30歳未満の多くの若者に会いました。近視の人が同様な状況に置かれたら、どのように感じるか想像してみてください。視力を矯正するメガネを掛ける代わりに、一生、さらにぼやけた視界をもたらすメガネを掛け続けているようなものです」。
ギヨーム・バニエル氏は、2つの主要な技術的モジュールを使用して、よりコンパクトで自律的に機能するプロテーゼの新しいアーキテクチャを発明しました。このプロジェクトの構想をかためると、彼はLille Eurasantéインキュベーターに参加し、2021年にRevival Bionics社を設立しました。ロボット工学に情熱を持ち、障がい補償プロジェクトに熱心に取り組むネイサン・ジラード (Nathan Girard) 氏は、CTO (最高技術責任者) として同社に参加しました。
バイオニックプロテーゼ: 重要な役割を果たすモータ
単純なカーボンスプリングで製造されたパッシブ製品とは異なり、Revival Bionics社が開発したバイオニックプロテーゼには推進力があり、モータと人工アキレス腱が装備されています。モータは歩行者に推進力を与えることで、歩行者の足取りを軽くし、反対側の足は、かかとで地面を強く打つ必要がなくなります。モータによる推進力により、変形性関節症の影響を抑制し、歩行全体がより快適になり、患者の切断端部への硬い不快感を低下します。
「すなわち、今日当社が提供しているものは、あなたが何もしなくてもソケットを介して正しく歩くことができる、装着可能な足なのです。患者が一歩踏み出すだけで機能するのです」。ギヨーム・バニエル氏はこう説明します。自然な歩行を再現するため、Revival Bionics社は、多くの技術的課題を克服し、ハードウェアとソフトウェアの両方の観点から競争力のある製品を提供する必要がありました:
- コンパクトで無騒音のなデバイスを実現する、プロテーゼの機械構造を設計すること。
- 歩行を再現するアルゴリズムにより、このメカニズムを制御すること。
すなわち、技術的な課題とは、患者に性能と自律性を提供しつつ、適正な数量のバイオメカトロニクス人工足首の作成を実現可能にすることを意味していました」。人間の足首は非常に複雑で、特に強力な関節であり、このタイプの製品には高い需要があります。歩くときに推進力を与えることで、日常生活をより自然に、より経済的なものにします。要求される性能を満たすため、チタン、アルミニウム、カーボンファイバーなど、最も効率的な素材を使用する必要がありました」と、Revival Bionics社の最高経営責任者であるバニエル氏は述べています。
バイオニックプロテーゼは、EC60 Flatモータで駆動します。
バイオメカトロニクスの分野では、コンパクトさと電圧レベルにおいて、高い要件を満たす必要があります。「バッテリーのサイズは一定の寸法を維持する必要があったため、Revival Bionics社では外骨格で適用される電圧レベル (48V) を確保できませんでした」。48 Vという電圧レベルで性能を維持することはエンジニアにとっては簡単なことですが、これより低い電圧で患者をサポートすることは至難の業です。私たちは社内で、このことを『ハードウェア・クラフトマンシップ』と呼んでいます」。同CEOはこう語ります。
パフォーマンス、自律性、コンパクト性、トルク、ノイズ...モータの選択は非常に重要でした。さまざまなモータを評価した後、Revival Bionics社はmaxonの EC 60 Flat モータが、市場にある最良の選択肢であることにすぐに気付きました。
「maxon製品の品質、プロジェクトの速やかな進行を実現する製品の入手可能性、チーム全体に行き渡っているハイレベルな専門知識、そしていつでも支援を受けることができるサービスが、私たちがmaxonの製品を選択した理由です。EC 60 Flatモータが生成する高トルクは、患者に多大なメリットをもたらします。さらに、このモータの特性である低速性とアーキテクチャにより、生成するノイズを大幅に減らすことができます」とギヨーム・バニエル氏は続けます。「maxonのチームにサポートを依頼すると同時に、私たちはモータを迅速に入手するために、maxonオンラインショップを頻繁に利用しました。このため、供給体制は非常にスムーズで、私たちは価値を創造する開発作業に集中することができました」。
Revival Bionics社のCEOは、MVP (Minimum Viable Product) への移行を迅速に進め、市場からのフィードバックを受けて改善するということを可能にする既製品を見つけることができたことを、大変嬉しく思っています。ードバックを受け「すでに市販されている製品の品質を見れば、将来においてもサポートを提供する能力がmaxonにあることは一目瞭然です!」
バイオニックプロテーゼ: 競争優位性とアクセシビリティの難しい方程式
デバイスをできるだけ入手し易くするには、プロテーゼの価格設定が非常に重要です。「こうした革新的デバイスでは、投資家との企業収益性を確保する必要があるため、市場投入時の価格は最初は必然的に高額になります。このため、当社のプロテーゼに最初にアクセスできるのは、いわゆる保険患者になります。この最初の販売段階で、当社のデバイスは臨床研究のための十分な正当性を持つことでしょう。そして段々と、特に切断者の60%を占める糖尿病患者がより多く利用できるようになるはずです」とギヨーム・バニエル氏は語ります。
また、Revival Bionics社は、さらに多くの人々がプロテーゼを入手できるようにすることも計画しています。実際、女性の平均的な足のサイズは37~38 (23 cm) ですが、市場の主な製品のサイズは40 (25 cm) 以上です。
同スタートアップ企業は将来的に、小児科市場にも参入し、生まれつき手足のない子供たちや、癌を患い、手足の切断を余儀なくされた子供たちのためにプロテーゼを提供することを目指しています。ここでは、常に成長する若い患者の身体にプロテーゼとソフトウェアを適応させる必要があるため、これは大きな課題だといえます。このプロジェクトを実現するため、特に経済的な観点から、Revival Bionics社は各支援協会と緊密に連携していく予定です。
さらにRevival Bionics社は、BPIによる1999年の第1回大会以来、初めてオー=ド=フランス地域圏での優勝を手にしたことを誇りとしています。フランスの高等教育・研究・イノベーション省が主催するこのフランスの競技大会は、毎年2万3,000 件を超える応募から、革新的なテクノロジー企業が創造した10件の最優秀プロジェクトに賞を授与しています。私たちが成功を確信している、ビジネスプロジェクトの快挙だといえます!
Revival Bionics社の次の目標は何でしょう?このスタートアップ企業は、デモンストレーターが期待される結果を示していることから、製品をさらに開発し、最終的にCEマークを取得するための資金調達を行っています。maxon EC 60 Flatモータは、この商用ソリューションに内蔵されており、Revival Bionics社は今後の開発にもmaxonの製品を用いることを計画しています。
詳細情報: https://www.revivalbionics.fr/
歩行者の足の動きをリアルタイムで再現する最初のデモンストレーターの動画:
Revival Bionics社のCEOであるギヨーム・バニエル氏は、maxon Franceと共にSIDO 2022に出席しました。
Revival Bionics社のバイオニックフットのデザインをご覧ください!
maxon Groupは、9月14日 (火)、午後3時30分~4時15分にSIDOで会議を開催します。 会議のトピックは、「人の動き、バイオニクスによる新たな可能性: バイオメカトロニクスソリューションの精度とパーソナライゼーション」です。リヨンのCentre des Congrèsで是非お会いしましょう。
会議に参加する人間の動きとメカトロニクス技術の2名のスペシャリストの意見にもご注目ください。またここでは、サイバスロンチャレンジ 2022の優勝者であるSmart Armチームの技術力を (再) 発見する機会もご提供しています。同チームはmaxon FranceがEcole des Minesでサポートしている AIMove修士号も取得しています。
- ナタナエル・ジャラッセ (Nathanael Jarrassé) 氏: ロボティクスおよび生物工学CNRS研究者、ソルボンヌ大学、ISIR、Smart Arm。
- アリーナ・グルシコワ (Alina Glushkova) 氏: リサーチエンジニア、MINES ParisTech、CAOR (Centre de Robotique)、Master AI Move。
SIDOのチケットはこちらから無料でご入手いただけます。招待コード E-LY22MAX