maxon Story
火星における生命の痕跡の探求


火星にはかつて液体の水と大気がありました。さて、そこには生命も存在したのでしょうか? この根本的な疑問に答えを見出すため、NASA はこれまでにない複雑な技術が搭載されたロボットである探査車パーセベランス (Perseverance) を火星へと送り出します。
今では珍しくない火星のミッションですが、火星表面に無傷で着陸できる宇宙船はまだごくわずかしか存在しません。2016 年に欧州宇宙機関 (ESA) が送り出した着陸探査機スキャパレリ (Schiaparelli) は火星表面で粉々に砕け散り、その難しさを痛烈に示しました。一方、米国国家航空宇宙局 NASA は、過去に 4 台のロボット探査車を火星に着陸させることに成功しています。そして 2021 年 2 月 18 日、5 台目の探査車パーセベランス (Perseverance) が火星への着陸を果たしたことにより、宇宙探査の歴史に再び新たな一ページが刻まれました。
しかしながら、人類が火星に着陸するまでには、まだしばらく時間がかかることになりそうです。このため、目下の作業をこなすにはロボットが必要であり、パーセベランス (Perseverance) にも多くの任務が用意されています。この探査車は、太古、水で満たされていたジェゼロクレーターに着陸し、その地域がかつては生物が居住することが可能な環境であったかを調査する任務を遂行します。さらにこの探査車は、生命の痕跡、つまり「バイオシグネチャー」を探索します。そのため、この探査車にはさまざまな測定器が搭載されています。
3 つ目の任務は、技術デモンストレーションを行い、将来の有人火星ミッションへの道を開くことです。酸素生成実験装置「MOXIE」は、火星の大気中に存在する少量の酸素から酸素を抽出します。酸素は呼吸に必要なだけでなく、燃料の製造にも使用できるため、この技術は有人ミッションにとって非常に重要です。
生命の秘密
次に、最も壮大で技術的に最も厳しい要件が求められる、4 つ目のミッションについて話しましょう。パーセベランス (Perseverance) は、最大で 30 の土壌サンプルを採取し、それぞれを保管容器へ入れて密封し、火星の地表に置き、後続のミッションが土壌サンプルを地球に持ち帰ることができるようにします。火星から直接土壌サンプルを入手し、最先端技術を使用して地球で研究できることは、科学者にとってまさに夢の試みです。NASA が述べているように、これらの土壌サンプルは、太陽系における生命の起源と進化について、多くの謎が解明される潜在的な可能性を秘めています。
サンプル採取を成功させるには、3 つのシステムがシームレスに連携する必要があります。まず、探査車の前方に装備されている大型ロボットアームが火星の岩石にドリルで穴を開け、コアサンプルを採取します。サンプルは、カルーセルによって探査車内に取り込まれます。そこで、3 つ目のシステムが作業を引き継ぎます。これは「SHA」と呼ばれる別のロボットアームで、サイズは他のアームよりもずっと小さくなっています。このアームはカルーセルからサンプルを取り出し、体積評価ステーションとスキャンステーションに搬送し、次にシーリングステーションに移し、最後に一時保管場所へと搬送します。なお、これらのプロセスはすべて自律的に実行されます。
maxon は、ここで本領を発揮します。サンプルの処理には、複数の BLDC モータが使用されています。これらのモータの一部は、サンプルをステーションからステーションに搬送する SHA ロボットアームに取り付けられています。その他のモータは、サンプルチューブを密封して配置する際に使用されます。
成功の秘訣は不変
これまでに 100 台以上のマクソンドライブが火星で活躍してきたように、パーセベランス (Perseverance) に搭載されているモータも、カタログ標準製品に基づいた製品です。使われているのは、ブラシレス DC モータ EC 32 flat が 9 台、そしてプラネタリギアヘッド GP 22 UP と組み合わされた EC 20 flat が 1 台です。当然のことながら、ミッションにおける厳しい要件を満たすには、これらのドライブに変更を施す必要がありました。しかしそれでも、地球上のあらゆる種類の用途に応用されているモデルがドライブのベースとなったことには変わりません。
maxon のエンジニアは、NASA のすべての無人ミッションを主導する推進研究所 (JPL) の専門家と緊密に協力し、3 年間にわたってモータとギアヘッドを修正し、試験を繰り返してきました。パサデナを拠点とするこの同研究所の宇宙専門家たちは、電気モータのスペシャリスト、maxon motor のスイス本社を頻繁に訪れました。maxon SpaceLab 所長のロビン・フィリップス氏は、「この協力関係を通じて、私たち非常に多くのことを学びました」と述べています。これらの知識は、より高い品質基準、新しいテスト手順およびプロセスに顕著に反映されています。「要件が類似していることが多い医療部門など、他の業界のお客様もこれらの知識の恩恵を受けています」。
フィリップス氏と彼のチームは、maxon のドライブ機能に大きく依存するパーセベランス (Perseverance) 探査車の活動を、いくぶん緊張しながら見守っています。フィリップス氏は、「私たちは、絶対的に重要なこのアプリケーションに携わっています。当社の BLDC モータが取り付けられたロボットアームが動かなかったり、グリッパが機能しなかったりすれば、ミッション全体が失敗に終わります」と述べています。
ミッション
パーセベランス (Perseverance) は、火星における太古の生命の痕跡 (バイオシグネチャー) を探索し、岩石と土壌サンプルを採取し、地球に戻る準備を行います。 また、有人ミッションへの道を切り開くための実験も予定されています。
火星への打ち上げ
ローンチヴィークル Atlas V-401
打ち上げ地 Cape Canaveral Air Force Station (米国、フロリダ)
火星到着日 2021 年 2 月 18 日
着陸地 ジェゼロクレーター
ファクト
ミッションの予定
期間 1 火星年以上 (687 地球日)
重量 1025 kg
長さ 3 m
高さ 2.2 m