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高分解能エンコーダの利点と用途

近年、高分解能エンコーダの市場は毎年成長を続けており、今後も成長率の増加が予想されています。maxonは、コンパクトなENX 16 RIOとともに、ハイエンドモデルも発表しました。では、高分解能エンコーダがもたらす利点を最大限に発揮できるのは、どのような用途なのでしょうか? 

エンコーダに求められる要件はどんどん増え続けています。電子部品の配置などの位置決め用途では、特に高い要件が求められます。その理由は、マイクロプロセッサやプログラマブルロジックモジュール (FPGA) など、最新の非常に複雑な集積回路の電気接点の数が増加すると同時に、ハウジングサイズが縮小されているためです。たとえば、JEDEC標準規格MO-298に準拠した最新の WF-XBGAハウジングは、最大2,601個の接点を有し、グリッドサイズは0.4 mmで、0.4°m (1/900 回転) の位置決め精度が必要です。このタスクに適したロータリエンコーダは、10倍の分解能を必要とします。インクリメンタルエンコーダの場合だと、1回転あたりのパルス数 2,250 カウント (cpt) の最小分解能が必要です。 

高度な一定速度制御を使用する用途では、エンコーダの分解能に対する要求はさらに高くなります。設定値から指定された速度最大偏差と必要なエンコーダ分解能は二乗関係であるため、このタスクには1回転あたりのパルス数が10,000のエンコーダが必要です。通常、駆動システムが小さく速度が遅くなるほど、必要な分解能は高くなります。 

堅牢、コンパクトなエンコーダ 

これらの用途では、高い分解能であるだけでなく、機敏でダイナミックなシステムを構築するため、比較的高い最大速度とエラーのないエンコーダ機能も必要になります。少なくとも、高解像度のエンコーダであっても、できる限り設置スペースを最小限に抑え、電気的・機械的に堅牢性を確保する必要があります。 

ENX_16_RIO

ENX 16 RIOエンコーダ

1回転あたりのパルス数6万5,536の新しいmaxonソリューション 

maxon ENX 16 RIOエンコーダ (RIO は Reflective、Interpolated、Optical の略) は、特にコンパクトなサイズの高分解能光学式エンコーダを必要とする要件を満たしています。最新のテクノロジーを使用することで、1回転あたりのパルス数最大6万5,536を確保することができます。また、外径16 mm、長さ7mmのハウジングは、その射出成形構造により、非常に高い堅牢性を機械的に発揮します。 

モータシャフトへの直接取付け 

ENX 16 RIOは、差動EIA RS422互換出力信号を備えたインクリメンタル3チャンネルエンコーダです。分解能は工場出荷時に、1回転あたりのパルス数を512から最大値までの範囲で設定できます。1回転あたりのパルス数が最大4,096の分解能の場合、エンコーダは40,000 rpmと高速でも、エラーなく動作します。分解能が2倍になると、速度は半減します。これは、最大出力パルス周波数が3MHzであるためです。ただし、1回転あたりのパルス数16,384という非常に高い分解能でも、速度10,000rpmは可能です。しかも非常にコンパクトなサイズに収っています。この高速性は、バネのような接続要素を使用しない外部ベアリング構造によってサポートされています。ターゲットディスクをモータシャフトに直接取り付けることで、位置決め用途においてダイナミックレンジ全体を使用できるようになります。 

ENX 16 RIOエンコーダは、256ラインのディスクを使用します。最大256のプログラマブル補間機能により、1回転あたりのパルス数が最大 6万5,536の分解能を実現することができます。インクリメンタル4逓倍では、最大位置分解能は18ビットです。高解像度にもかかわらず、エンコーダは非常に高い堅牢性を備えています。動作温度範囲は-40 °C~+100°Cで、適合するモータフランジと組み合わせることで、プラスチックコーティングされた回路基板がIP5x保護等級に準拠した防塵ハウジングになります。この光学式エンコーダは「汚れが生じる」環境にも適しています。ENX 16 RIOにより、幅広いmaxon DCモータに対応するモジュラーソリューションが使用可能になります。DCX 16からDCX 35、EC-4pole 22およびEC-4pole 30シリーズに基づくダイレクトドライブソリューションと、コア付きインナーロータモータEC-i 30、EC-i 40およびEC-i 52の組み合わせが可能です。 

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3Dプリンターから手術用ロボットまで 

表1は、新しいENX 16 RIOエンコーダの主要データをまとめたものです。この新しい高分解能エンコーダは、高精度の位置制御および速度制御に特に適しています。高い最大パルスレートと外部ベアリング構造により、速度と制御ダイナミクスにおいて妥協のない性能を発揮します。ENXの堅牢なハウジング、幅広い動作温度範囲、 差動信号によるRS422インターフェース、防塵構造により、精密測定、印刷機、デルタ ロボット、3Dといった多くのハイエンド用途で新しいソリューションが実現します。ここで忘れてはいけないのは、新型エンコーダの機能を最大限活用するには、十分な動的性能を発揮する位置コントローラと速度コントローラが必要であり、正しく設定されていなければならないということです。これらの要件は、ESCON、EPOS4、MAXPOSなど、maxonの高性能モーションコントローラによって満たされます。機械的出力コンポーネントも、最高の品質と精度要件を満たしている必要があります。そういった理由から直接駆動の用途には、高分解能エンコーダを設置することが推奨されています。 

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ENX 16 RIO – 構成可能なDCモータ (DCX 16 S) と組み合わせた1回転あたりのパルス数最大6万5,536の光学式反射型エンコーダ

著者: Dr. Volker Schwarz

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