maxon Story

気候変動と闘う緑の壁

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気候変動、細塵汚染、都市生活空間の緑化は、私たちの社会の将来における重要な課題です。世界中の都市計画者は、環境に配慮した建築とインフラストラクチャのソリューションを模索しています。生態学的な課題に対応するため、Gartenheim住宅協会は8年間研究を重ね、高度な垂直緑化システムを開発しました。このシステムの駆動を担っているのがmaxonの製品です。

未来トレンドを象徴する緑の建築と垂直庭園

アーバンガーデニング、コミュニティガーデン、緑豊かな都市建築: 人類および環境のための資源として、緑豊かな都市空間を形成していくことはますます重視されています。これには理由があります:都市は、ますます多くの人々を引き付ける未来の快適な生活空間と見なされる傾向にあります。同時に、人々は自然との触れ合い、また自然がもたらす高い生活の質をますます強く切望するようになっています。この開発は、世界中の都市で内側から改善を図り、増加する大気汚染と気候変動に対処するための解決策を模索するという課題を提示しています。

世界的に有名な都市計画者や建築家が、都市緑化のコンセプトの開発に取り組んでいます。この開発において、彼らの多くは同じ問題に直面しています: 慢性的なスペースの不足です。これが、ミラノ、東京、パリなどの主要都市に、統合された森林を含む超高層ビルのビジョン開発する契機となっています。

計画には、都市の汚染された空気を浄化するため、水平・垂直方向の緑豊かな植物を建物に配置して、マイクロクライメイトに有益な効果をもたらし、都市の騒音を低減するとともに、自然な日陰を確保することが含まれています。

建物の壁にガーデニングを施すというアイデアは、スタンリー・ハート・ホワイト (Stanley Hart White) 教授が1938年に特許を取得したことに端を発しています。有名な芸術家であるフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏 (Friedensreich Hundertwasser) も、彼の家に緑の造園を用いました。しかしこれは、あくまでも水平面のみの庭園に留まっていました。垂直庭園によってスタンリー・ハート・ホワイト教授の手法を世界的に有名にしたのは、フランスの庭園デザイナー、パトリック・ブラン (Patrick Blanc) 氏でした。

ハノーファー製の苔生成器

ハノーファーを拠点とする住宅協会、Gartenheimの最高経営責任者であるギュンター・ヘーゼ (Günter Haese) 博士は、植物を建築プロジェクトに統合しつつ建築的および生態学的な付加価値を提供するにはどのような方法があるか、自問自答していました。博士は、都市の外観を美化し、灰色の建物の壁を置き換え、同時に生物学的空調系統として機能する緑の垂直庭園でハノーファーの都市を覆うことを思い描きました。徹底した研究、そして生物学者との活発な意見交換を経て、エンジニアである博士は、苔マット向けの汎用モジュール式垂直灌漑システムの開発に着手しました。Gartenheimは、酸性環境を好み、メンテナンスをほとんど必要としない、都市空間に最適な緑豊かな苔を採用しています。さらに、この丈夫な胞子植物は、驚くべき生態学的効果をもたらします。これらの苔は、細塵を結合し、環境中の酸性汚染物質を吸収し、空気の湿度を高めるほか、水の蒸発により冷却効果ももたらすのです。

長年の経験から、垂直庭園を手入れする上で、最大の課題となるのは灌漑でした。苔には、必要な水を汲み上げる根がありません。 代わりに、外側のスポンジのような構造に水分を蓄えます。このため、垂直壁では、苔は正面からしか灌漑できません。

現在、Gartenheimの「苔生成器」は、広い表面で均一な正面灌漑を可能にする唯一のシステムであり、人工の垂直面でも苔に最適な生成環境を提供することができます。このため、英国蘚苔類学会は、ハノーバーから誕生したこのイノベーションを世界で最も注目すべき苔プロジェクトの1つとして賞賛しました。

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可動式スプリンクラーアームは、コケの表面を均等に上下に移動するだけではなく、移動中にわずかに揺れて、1ミリ単位で水が確実に供給されるようにします。

苔マットを散水するユニークな垂直式緑化システム

特許取得済み垂直式緑化システムの背景にある原理: 可動式スプリンクラーアームは、コケの表面を均等に上下に移動するだけではなく、移動中にわずかに揺れて、1ミリ単位で水が確実に供給されるようにします。余分な水は、苔を囲むスチールトレイに流れ込み、リサイクルされます。このため、周囲に散水して水を無駄にすることなく、灌漑は最適に制御されます。主に雨水が苔の散水に使用され、環境サイクルを効率的に閉じることができます。

数百個の小さな穴を有する振動型ジェットパイプが、苔の表面を均等に移動します。画期的なデザインのこのシステムには、Gartenheimが開発・製造した約180個のコンポーネントが使用されています。システム自体は緑色の表面の後ろに隠されているため、技術的な詳細は傍目には見えません。

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苔生成器を備えた新しい垂直緑化システムのうちの2機が、既にハノーファーで稼働しています。これらのシステムは、今後さらに増設される予定です。

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最適なコンポーネントの選別はとても難しい課題でした。湿気にさらされるのは苔マットだけではありません。コケ生成器とそのすべてのコンポーネントも、常に湿気にさらされることになります。このため、システムの耐用年数を長く維持するには、耐食性が最も重要となります。ギュンター・ヘーゼ博士は、多くのコンポーネントを綿密に調査し、一連の厳格な試験を実施しました。垂直緑化システムに関する彼の壮大なプロジェクトは、高い信頼性を発揮し、未来の課題に対応できるものでなければなりません。耐摩耗性、長寿命、高硬度も、適切な部品を選択するための重要な基準でした。高精度ドライブシステムにおいて世界を牽引するプロバイダーであるmaxonのドライブとセラミック軸は、高い要件を満たし、今では垂直緑化システムの一部となっています。

灌漑システムは、さまざまなサイズで構築することができます。加えて、苔の壁と散水システムを新しい建物の側壁に直接統合したり、住宅の前にスカルプチャーとして配置したりすることも可能です。

著者: maxon HQ

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