maxon Story

宇宙のランデブー 新型ドッキングシステム

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欧州宇宙機関 (ESA) は、2機の宇宙船を容易にドッキングできる新しいシステムの実現に取り組んでいます。maxon はこの目的のために 2台の特別なドライブシステムを開発しました。

過去に何度も行われたとはいえ、宇宙における 2つの物体のドッキング操作は、常に細心の注意が必要な、危険をはらんだ作業です。極めて高速 (ISS の場合は約 28,000km/h) で行われるこの作業は、修正も困難です。例えば、2つの物体が接近する際、姿勢制御用のスラスタは使用できません。排気プルームがダメージの原因となる可能性があるからです。損傷を防止するため、宇宙貨物輸送機は国際宇宙ステーション (ISS) に装備されたロボットアームで捕獲され、手動で係留されます。一方、有人宇宙船はコンピュータ制御プロセスで直接ドッキングします。

このタイプのドッキング操作は、将来的にはより容易で安全になる予定です。欧州宇宙機関 (ESA) は IBDM(国際的係留およびドッキング機構) と呼ばれる新たなドッキングシステムの設計を産業パートナーに委任しています。これは、全世界の有力な宇宙機関が同意した国際ドッキングシステム規格 (IDSS) に準拠するものです。このためこのシステムは、ISSや他のほとんどの宇宙船に対しても互換性を得ることになります。このメカニズムの最初の任務は、小型のスペースシャトルのような宇宙船で、近く ISSへの貨物輸送も担う予定である 「Dream Chaser (ドリーム・チェイサー)」を使って行われます。なお、この宇宙船は Sierra Nevada Corporation が開発したものです。

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吸収されるドッキング・エネルギー

IBDMは、アンドロジナス結合システムです。これは、両側のコネクタが同一である (オスとメスの区別がない) ことを意味します。硬質な内輪 (ハードキャプチャシステム)、そして6DoF(6自由度) と力覚センサを有する軟質な外輪 (ソフトキャプチャシステム) で構成されるこのシステムでは、外輪によってまずはドッキング・エネルギーが吸収されます。そして、最終的な気密接続が行われ、2機の宇宙船をしっかりつなぎ合わせる機械的フックが接続を固定します。

SENER社は、ハードキャプチャシステムの開発・装備を担当しています。同社は現在、2020年に試験が予定されている認定用モデルの準備中です。「その後、IBDMはできる限り早急に ISSへの貨物飛行に投入される必要があります」と、SENER社のガブリエル・イバッラ氏は語ります。その後に続く諸段階で行われることには、NASAの月近傍有人拠点における使用も含まれています。この拠点は月の周回軌道上に乗り、将来的には火星で有人ミッションを行う際の基地と成り得るものです。

デュアルシステムで最大の安全性を実現

これは SENER社のエンジニアたちにとって、難しいがやりがいのあるプロジェクトです。「私たちはまず、ESAと NASAが定めたすべての必要条件を理解し、それらを満たす方法を考え出さなければいけませんでした。また、このドッキング機構は有人飛行にも対応しますので、安全性に関しても考える必要がありました」。使用される電気ドライブは、軽量であると同時に要求されるトルクを発揮し、信頼性も極めて高いものでなくてはいけません。こうした理由から、SENER社はすでに数年間にわたり、ドライブのスペシャリスト maxonと協力・連携しています。

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ハードキャプチャーシステム用に、maxonは巻線 2 個と GPX 22 UP プラネタリギアヘッドを搭載した EC 32 フラットモータを開発しました (上)。12 台の maxon ドライブシステムがロック用フックを駆動します。各ドライブシステムは、ブラシレス EC-4pole 30 モータ 2個と GPX 42 UP ギアヘッドで構成されています (下)。

SENER社のために、maxonのエンジニアは非常に多様な機能を持つ 2種類のドライブを開発しました。1つめのドライブは、2 個のブラシレス EC-4pole モータと GPX UP ギアヘッドで構成されています。12個のアクチュエータが、IBDMドッキング機構でロック用フックを駆動します。2つめのドライブでは、フラットモータとプラネタリギアヘッドが組み合わされています。このタイプのドライブは 11箇所で使用されており、プラグイン接続やカメラの保持、その他の補助機能を管理しています。

IBDMドッキング機構は飛行に重大な影響を与えるアプリケーションであるため、リダンダントな (冗長化された) ドライブシステムが必要となります。一次ドライブに障害が生じた場合は、バックアップが機能しなければなりません。多くの場合、これを解決するのは緊急時に代役となるバックアップモータの存在です。ロック用フックのアクチュエータにもこのアプローチが使用されています。しかしながら、他のドライブシステムについては、maxonのエンジニアはこれとは異なる画期的な解決法を見出しました。すなわち、モータの代わりにステータ (固定子) を追加したのです。このため、フラットモータにはステータが 2 個備わっており、よって巻線も 2本存在しています。これらはそれぞれが独立してロータを回転させることができ、スペースを節約しながらも安全性を保証するという独創的な解決法を提示しています。

ガブリエル・イバッラ氏は、maxonとの協力・連携関係を称賛しています。「チームは我々が求める要件を理解し、迅速な設計変更で対応します」。また、SENER社も maxonも、メカトロニクスシステムに対する情熱を持っています。「設計から製造、試験までのサイクル全体に関与できるということはとても素晴らしく、非常に興味深い体験です。そしてシステムが初めて動き出した瞬間は、まるで我が子が、生まれて初めて歩き出したのを見るような気持ちになります」。

画像著作権
SENER / maxon / Sierra Nevada Corp.

Author: Stefan Roschi

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