maxon Story
上肢・下肢切断患者にパワーを与える義肢を手頃な価格で
Unlimited Tomorrow 社のイーストン・ラシャペル氏が最初の義手を作り始めたとき、彼はまだ 10 代でした。その 6 年後、彼は初代プロトタイプをより洗練された製品として仕上げ、コストを大幅に削減した製造方法を模索し、ロボット義肢の開発に取り組むことに照準を合わせました。適切な DC モータとギアを使用することは、彼の設計で欠かせない重要な要素です。
四肢を切断した人や生まれつき上肢・下肢がない人に役立ち、長期的に高い信頼性を維持できるロボット義肢は、手頃な価格では存在しませんでした。四肢を失った人々がその身体的な違いによってしばしば直面する偏見のほか、こうした状況にある子供たちは、他の子供たちと同じように行動できない、他の子供たちのような外観でない、そして仲間から嘲笑されることがあるという事実に直面しています。そしてそれは、時として残酷な結果をもたらすこともあります。
子供および成人用の一般的な義肢の価格は 30,000~100,000 ドルです。そして、子供は成長もします。このため、こうした価格では、多くの家庭にとって義肢はまったく手が届かない製品となってしまします。Unlimited Tomorrow 社は、今年後半に約 10,000 ドルで高性能な義手を発売する予定です。最先端技術を手頃な価格で購入できるようにすることを目指す同社は、画期的な新技術を導入しました。たとえば、同社のロボット義手・義腕の人工装具構造は、MultiJet Fusion (MJF) と呼ばれる 3D プリントプロセスを使用して製造されています。これは、製品を使用者の肌の色合いに合わせることができるほか、そばかすやあざなど、実際に存在する色の個人的な特徴も含めることができる優れものです。指の爪は磁石で作成されており、マニキュアを塗ったり、さまざまな方法で装飾したりもできます。こうした特徴は、友人や兄弟姉妹のような外観に見えること、彼らのように生活できることを望む子供たちにとって、特に重要な要素です。反対側の上肢・下肢のスキャンと他の測定値を用いれば、大がかりな試行作業を行うことなく、ユーザーにぴったりと合う固有のソケットとデバイスを作成することができます。
もちろん、外観も重要な要素の一部です。ロボット義肢が日常生活を営むうえで直面する問題に対応できるようにするには、機能性と実用性が重要になります。ラシャペル氏は、広範囲にわたる技術を使用して設計の欠陥を解決し、現在の製品にたどり着くまで何年も理論の検証を行いました。
突然片方の手が使えなくなることを想像できるなら、上肢・下肢を切断された人や生まれつき四肢のない人々が、毎日どのような困難に直面しているかを想像することもできます。そして、これらの義肢がユーザの日常生活に一旦取り込まれ、そして故障が生じたりすれば、本当に煩わしい事態になります。すなわち、義肢は長寿命で、高い信頼性を発揮することが必要不可欠なのです。同社が設計を始めた頃は、これらの特性を確保することが非常に困難でした。彼らが選択したモータとギアボックスは十分に機能はするものでした。しかし、毎日の使用によるストレスのため、特に子供たちの活発な動作によって、コンポーネントは数か月後には故障することがよくありました。
ラシャペル氏は、「精密で繰り返し精度が高いだけでなく、これまで使用していたものよりもはるかに信頼性の高い電動モータとギアヘッドを見つける必要がありました」と語ります。そして解決策を模索した結果、同社は maxon (マサチューセッツ州トーントン) が設計・製造した 2 台の DC モータを組み込むことに決めました。「これで、高品質のモータを入手しただけでなく、同じサイズのパッケージで回転数とトルクを大幅に向上させることができました」。
maxon DC モータは小型であるため、子供向けのロボット義手にも容易に収まり、重要な占有面積テストも楽々クリアしました。「これにより、大人向けの義肢と同じモータを子供向けの義肢でも使用できるようになり、入手する必要があるコンポーネントの数を減らすことができました」。ラシャペル氏はそう述べています。
これらのモータは、すべての電子機器とともに、ロボット義手の手のひらに搭載されています。電力密度が高く、高い回転数とトルクを発揮するこのモータは、特殊な触覚センサをフィードバックとして使用するため、ロボット義手のグリップを正確に制御できます。
ロボット義手に使用されている maxon 製品は、DCX 12S シリーズのモータと GPX 12HP シリーズのギアヘッドです。ブラシ付き DC モータは、バッテリ電源で数日間動作します。バッテリの充電は、ワイヤレス充電デバイスを使って行われます。モータは、電圧 3 V~12 V で 9000 rpm 以上の回転数で動作し、出力 1.6 W を提供します。最大連続トルク出力は約 1.9 mNm です。モータは、スムーズな動作を確保するために、貴金属とボールベアリングを使用して設計されました。GPX 12HP は、アプリケーションに応じてさまざまな減速比で静寂な動作を実現する遊星ギアヘッドです。
モーションシステムの精密な制御は、同社が独自に開発した筋肉センサによって行われます。筋肉データは AI アルゴリズムを使用して処理されます。これでユーザの意図を解読し、データを手の動きに変換します。触覚を認識できるようにするために触覚フィードバックがデバイスに組み込まれており、これが人間のようなフィードバックループを創り出しています。
カリス
16 歳のカリスは、編み物、ピアノ、ベビーシッター、家族との遊びが大好きな少女です。彼女は、まだ幼なかった頃に操作が困難な筋電義手の使用を諦めてから、ずっと義肢を持っていませんでした。彼女の身体は、手足がないことで腕の長さを補うために不健康なバランスをとる習慣を身につけてしまい、肩の痛みを引き起こしていました。しかし TrueLimb を使用しはじめてから、彼女は身体のバランスを取ることのメリットを実感することができ、髪をポニーテールにするなど、他の人が当たり前のように行っていることを自分でできるようになりました。
ナターシャ
ナターシャは、いつも笑顔を絶やさない 9 歳の少女です。彼女は体を動かしてゲームをするのが大好きです。彼女は生まれつき右肘より下の上肢の長さが違い、従来の義手は重く、ハーネスを着用する際の不快感から義手の使用を諦めていました。しかしナターシャには、バイオリンを弾き、忍者戦士スタイルの体操を学ぶという新しい目標ができました。このため彼女は TrueLimb の高度な機能を求め、そして夢を現実のものにすることができたのです。
Unlimited Tomorrow:
Unlimited Tomorrow 社の事業活動は、子供たちを支援することが大部分を占めています。同社は外観に焦点を当てるだけでなく、ユーザからの提案を取り入れ、機能を向上させて義肢を改良しています。モータを腕ではなく手のひらに配置することで手首の動作を改善し、ユーザにより受け入れられやすくなりました。各義肢は、高解像度のデジタルスキャンにより製造されるため、従来のプロテーゼよりも的確にフィットします。ロボット義足の一番の魅力は、色や操作性、耐久性ではなく、装着する子供達や若者たちの笑顔なのです。
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Unlimited Tomorrow, maxon Group