maxon Story

海底に広がる新世界への大胆な試み

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ブレーメンにあるロボティクスイノベーションセンターのエンジニアたちは、水中ロボットの研究に取り組んできました。これらの水中ロボットは、世界の海をさらに詳しく理解するためのものです。そして将来的には、他の惑星の深海にも進出するようになるでしょう。

ブレーメンにあるドイツ人工知能研究センター (DFKI) では、大きな水槽の底に立つクリスマス ツリーが 12 月中公開されています。すべての訪問者の目に留まるこのクリスマスツリーに、エンジニアの情熱が感じられます。クリスマスツリーの飾りは、浮力によって引き上げられています。フェアリーライトはクリスマスらしい照明を提供しています。電圧は 230 V。でも心配は無用です。このツリーは、センターの研究者たちが自信をもって作り上げた作品です。水中技術は彼らの専門分野です。彼らはちょっとした遊び心で、クリスマスツリーを飾り付けしました。「この研究所の素晴らしい作業環境では、革新的な新しいアプローチを試そうという高い意欲が湧き上がるんです。ときには皆で、ここで時間を過ごすことを楽しんだりもしています」。そう語るのは、DFKI ロボティクスイノベーションセンターの研究員であり、水中ロボティクスのスペシャリストでもあるペーター・カンプマン氏です。


カンプマン氏は、私たちを DFKI の大規模な海洋探査ホールに案内してくれました。ここは、ヨーロッパ全土で唯一の潜水ロボットをテストするシステムの本拠地です。この水槽は深さ 8 メートル。容量 340 万リットルの塩水を含んでいます。船やパイプラインが未知の海を探索したり、深海で測定を実行したりする新しい水中システムのテストを実施する際に最適な設備です。

「軽量でより強力な新コンポーネントにより、まったく新しい可能性がもたらされました」。

海洋部門は、長い間影の存在でした。たとえば、深海の大部分はまだ未開拓です。そのため、深さ 3,000~6,000 メートルの深海がどのような地形になっているのかは、正確にはわからないのです。火星の表面でさえ、より正確な地図があります。ただし、今後数年のうちに、こうした状況は一変するとになるでしょう。これもまた、最先端テクノロジーのおかげです。DFKI のロボティクスイノベーションセンターは、maxon のエンジニアと密接に協力し、ブラシレス DC モータを搭載した新しい水中ドライブの開発に取り組んでいます。耐圧性、コンパクト性、エネルギー効率性に優れたこれらのモータは、ROV (遠隔操作ビークル) や AUV (自律型水中ビークル) に最適です。ペーター・カンプマン氏と彼の同僚にとって、これは画期的な開発です。「軽量でより強力な新しいコンポーネントにより、まったく新しい可能性がもたらされました」。

 

ホッキョクグマとの比較


水中技術のトレンドは、「小型でインテリジェント」な技術を積極的に取り入れることです。現在、エンジニア達は、センサと電子機器を搭載した車両の製作に取り組んでいます。これらの機械は、人間の介入なしに、何か月間にもわたって調査を実行し、データを収集し、さまざまな状況に自律的に対応できなければいけません。海中は視界が悪く、GPS や WLAN 信号に使用される波長は水中ではすぐに吸収されます。過酷な条件下での作業は、決して簡単ではありません。このような環境では、ナビゲーションも困難です。塩水が部品を破壊し、一定時間後にはステンレス鋼を腐食させることさえあります。このため、モータシャフトなどのデリケートな部品はチタン製にする必要があります。また、周囲の水圧が高いことも重要な課題です。海底 6,000 メートルでの圧力は 600 バールです。これは、成長したホッキョクグマがわずか 1 平方センチメートルの面積に座っている圧力にほぼ匹敵します。ロボティクスイノベーションセンターでは、圧力チャンバ内でこのような値をシミュレートすることが可能です。maxonは、特別開発された水中ドライブの試験もここで行いました。水深 6,000 メートルに対応するコンポーネントは、世界中の海の 95% 以上で使用することができます。

 

1 グラムの差の重要性


DFKI のロボティクスイノベーションセンターを歩いていると、複数の水中車両が目に入ります。たとえば、Micro-AUV を見てみましょう。名前からもわかるように、この車両は非常に小さく、研究者はこれを制御とナビゲーションの新しいアプローチを試験するために使用しています。この車両に搭載されている部品のすべてを、最小限の残浮力が確保されるように設計する必要があるのです。浮力が 1 グラム増えるごとに、水中では重大な作用がもたらされます。システムで故障が発生した場合は、正の浮力制御によってシステムが水面に浮上しなければなりません。さもなければ、システムは海底で永遠に失われてしまいます。Micro-AUV 車両は、4 台のmaxon DC モータによって駆動されます。このモータは、特にエネルギー効率の高いドライブから成っており、小型バッテリーにもかかわらず長い耐用年数を発揮します。

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Peter Kampmann and his colleagues at the DFKI are testing new approaches to control and navigation with the Micro-AUV.

木星の月へ、間もなく旅立つ?


DFKI のもうひとつのエキサイティングなプロジェクトは、細長い葉巻のような形をした水中探査車、「ヨーロッパエクスプローラ (Europa Explorer)」です。このプロジェクトの長期的な目的は、木星の衛星エウロパの探査です。エウロパは厚さ 3~15 キロメートルの氷の層で覆われており、その下に海をたたえています。DFKI は、ドイツ航空宇宙センター (DLR) の委託を受け、このミッションの可能性を調査しています。現時点の理論では、AUV はドリルから地下海に到達し、そこで切り離され、自律的にデータを収集して地球に送信することになります。

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木星の月を探査するために使用されるヨーロッパエクスプローラ。


DFKI の現在のテストタイプには、maxon ESCON Module 50/5 モータ コントローラが装備されています。このモータコントローラは、そのダイナミクス性とアシスト機能が高く評価されています。「コントローラがエラーの原因を自律的に検出するため、作業はより快適になります」。ペーター・カンプマン氏はこう述べています。DFKI ロボティクスイノベーションセンターを訪れたことで、明らかになったことがあります。水中用途の技術分野は、もはや大型で堅牢なコンポーネントや即興的な技術で特徴付けられるものではないということです。センサ技術、自動化、ロボット工学も重要な役割を果たしているのです。有望な未来への出発点がここにありました。

 

ロボティクスセンター


ドイツ人工知能研究センター (DFKI) は、人工知能手法に基づく革新的ソフトウェア技術分野を牽引するドイツの主要な研究所です。同センターでは、さまざまな部門に従事する 800 名の職員を擁しています。約 130名の職員と 80 名の学生が、ブレーメンのロボティクスイノベーションセンターにて、宇宙や深海のロボットを扱う 25~30 つのプロジェクトに取り組んでいます。

 

特殊深海ドライブ


maxon motor は、謎に満ちた深く暗い海に挑みます。2 年間に渡る開発期間を経て、スイスのドライブスペシャリストが独自の水中ドライブを発表します。maxonのスラスタは、ブラシレス DC モータ、ギアヘッド、およびコントローラで構成されています。これにハウジングとプロペラが追加されます。このユニットは海水での使用を目的として設計されており、水深 6,000 メートル (600 バール) の圧力に耐え、耐食性にも優れています。


この特性を確保するために、maxon は主にチタンとプラスチックをこのドライブに使用しています。開発作業は、同社のエンジニアとドイツ人工知能研究センター (DFKI) との協力のもとに進められました。同研究所は、水中車両の分野を専門としています。スラスタの最初のモデルである MT30 は、今年、標準製品として提供されます。他のサイズの標準製品 (直径 20、40、70 mm) も生産される予定です。

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maxon thruster MT30

油入式と耐圧性


maxon は、カスタム水中用途向けの標準ソリューションとして、耐圧ドライブシステムを提供しています。コア要素は、ブラシレス DC モータと遊星ギアヘッドで構成されるモータギアの組み合わせです。腐食防止のため、ドライブはプラスチック製のハウジングに収められ、2つのチタン製フランジで密閉されています。このドライブは、コンペンセータ (補償器) に接続することが可能です。


油入式ドライブユニットは、チューブを介してコンペンセータ (補償器) に接続されます。水圧は膜を介してオイルに伝達され、水深や水圧に応じて一定の体積だけ圧縮されます。ドライブには、制御電子機器を接続するためのコネクタが装備されています。このコンパクトな水中ドライブは、直径 16~42 mm のサイズで提供されています。さらに、お客様の要件に応じてカスタマイズすることも可能です。


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ブラシレス DC モータ、遊星ギアヘッド、コントローラで構成された油入式水中ドライブ。最大水深 6,000 メートルの耐圧性。

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maxon motor ag; DFKI

Author: Stefan Roschi

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